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グローバル市場の為替変動リスクをAIで管理! ジーフィットのビジネスを支えるFINOLABの「信用」と「ネットワーキング」

「失われた30年」を経て、日本経済は今、分水嶺とも言える岐路に立っています。内需のみでの事業拡大が望めず、日本企業は必然的にグローバル市場とリンクしながら複雑な舵取りを求められるなか、大きな変動要因として挙げられるのが為替変動です。とりわけ現在の為替メカニズムは予測が非常に困難とされています。
為替変動によるリスクをどう減らすか。FINOLABに入居するジーフィット株式会社(以下GFIT、https://www.tradom.jp/company)は、AIを活用した「為替リスクコントロールの新常識」を掲げ、国内大手クライアントをはじめ多くの企業から信頼を集めています。本稿では同社代表取締役 co-CEO&CSMOを務める阪根 信一氏にお話を伺います。

「仮想AI為替アナリスト」の力で為替変動をより高精度に予測

―事業内容を教えてください。

GFITは、貿易を行う企業が直面する為替変動リスクを管理し、適切にコントロールするためのクラウド型プラットフォーム「トレーダム(https://www.tradom.jp/))」を開発し、提供しています。「あらゆるビジネスに世界で戦えるインフラを」をミッションに、為替変動によって生じるリスクを軽減し、グローバル市場に挑戦する企業の安定した経営をご支援しております。

―為替変動リスクは、なぜ企業にとってリスクになりうるのでしょうか。

為替変動リスクは海外から物やサービスを直接取引する企業にとって、常に悩みの種です。
例えば、1ドル100円の時に100ドルの商品を仕入れたとします。当初日本円で仕入れ10,000円だった商品が、支払いのタイミングで1ドルが120円になった場合、仕入れ金額は12,000円。20%もアップしてしまい、企業の利益率に大きな影響を与えてしまいます。多くの企業は商品への価格転嫁を行うことは現実的に難しく、自社の企業努力にも限界があります。
そのような事態を避けるために、企業は為替リスクヘッジを行います。仕入時と支払い時の為替変動による損失回避を行う為替予約といった手法がありますが、複雑な貿易取引の中で為替予約を実施する時期や金額を適切に判断するのはとても難しいのです。

 

―その課題に対して、GFITはどのように取り組んでいますか?

当社のソリューションである「トレーダム」は、主に為替変動リスクを可視化し、適切にリスクをコントロールします。具体的には、独自のアルゴリズムを用いたAI技術と金融工学に基づく計算により、お客様が為替予約を行う最適なタイミングと金額を提案します。これにより、企業は為替変動リスクを最小限に抑えられることを目的としています。

―AIを活用した為替予測は他社でも提供をしていますが、GFITの強みはどこにありますか?

「トレーダム」では、約1,000体の仮想的なAI為替アナリストが12ヶ月先までの未来の為替トレンドを予測し、それらの予測の確率分布を基に最適な為替予約の取り方を計算し提案します。 一般的に、資産運用目的でAIを活用して為替相場の予測を行う場合、単一のAIを徹底的に磨き込んで提供しているケースが多いのです。しかし、為替のような複雑かつ予測が困難な取引においては、複数のAIモデルを組み合わせることで予測精度をより高めることができると私たちは考えています。
実際の為替市場を考えてみても、取引を行うプレイヤーの戦略は様々で、それによって為替が変動します。同様に、「トレーダム」においても、約1,000体のAI為替アナリストがそれぞれ異なるデータやシナリオに基づいて為替を予測することで実際の為替市場の状況を踏まえることができます。ゆえにより広範囲のシナリオを予測できるのです。

為替変動によるリスクはあらゆる業種に関連している

―扱っている通貨を教えて下さい。

現在は13通貨ペアを扱っています。米ドル/円、ユーロ/円、中国元/円、コリアウォン/円など、日本企業がよく取引する主要な通貨は一通り取り扱っています。このラインナップは今後さらに拡大していく予定です。

―GFITの顧客は主に日本企業になるのでしょうか。

現状ではその通りです。お伝えできる範囲では、資生堂様や、KADOKAWA様、ジャパネットたかた様といった年商1,000億円を超える大手企業から、年商1億円以上の中小企業まで、幅広く導入いただいています。また、IT企業のMIXI様もご活用いただいています。

―IT企業も為替変動リスクは避けられないということですね。

IT企業のケースでは、例えばAWS様のような海外クラウドサービスとの契約が、非常に大きな為替変動リスク要因です。サービスの利用料は基本的に米ドルベースで請求されますから、現在のような円安相場の場合、日本円での支払いコストは大幅に上昇します。実際、日本のIT業界の約60%がこのような為替リスクの影響を受けていると予想されているほどです。

―クラウドサービスのユーザーサイドだけでなく、サービス事業者側も解約リスクを抑えるためにGFITのソリューションを活用できそうです。

実際、AWS様から紹介を受け、ご提案させていただくお客様企業もいらっしゃいます。サービス事業者側も解約リスクについては理解されていますので、為替変動リスクを管理することが解約リスク抑止につながると考えられています。私たちのソリューションはこういった場合でも効果を発揮できると考えています。

日本の偉大な技術系経営者に導かれて

―GFITについて教えて下さい。

GFITは2015年1月に設立されました。創業者である浦島が立ち上げて、私は2021年3月に共同代表として経営に参画しました。創業当初は別のビジネスモデルを模索していましたが、私が経営参加するタイミングでビジネスをピボットし、現在に至ります。

―阪根さんのご経歴を伺えますか?

私は物理化学を専攻し、アメリカのデラウェア大学で博士課程を修了しました。大学ではコンピュータシミュレーションやAIのニューラルネットワークのコードを書くなど研究に没頭し、国際学会でも発表しました。

―当時からAIについて知見をお持ちだったのですね。

そうなりますね。しかし、国際学会や大学で、世界のまさに天才と言われる才能を目の当たりにしたことで、研究の道は諦めようと考えるようになりました。当時はスタートアップという概念もなかったような時代ですが、企業経営について想いがシフトしていきました。 当時、共感したのは、日本の、製造業、技術系企業の立ち上げストーリーでした。とりわけ、松下幸之助さんや盛田昭夫さん、本田宗一郎さんといった、偉大な企業を立ち上げた方々の話に心を動かされました。

―日本の経営者に興味を持つようになったのは、意外に感じます。

焼け野原になった戦後の日本を、技術の力でここまでの経済大国に押し上げた、その姿を尊敬し、憧れましたね。とにかく感嘆を覚えました。
その後、人工衛星のボディーを高精度で設計製造するマテリアルサイエンス領域やロボティクスといった、複数のテクノロジー企業、スタートアップの経営に携わり、多くのことを学びました。その経験は現在に活かされていると感じます。

FINOLABの入居で獲得する「信頼の証」

―FINOLABに入居されたのはいつになりますか?

2022年7月に入居しました。それまでは小規模なオフィスで活動していましたが、資金調達後、改めてオフィスをどうするか模索していました。

―FINOLABへの入居を決めた理由を教えてください。

FINOLABはフィンテック分野のスタートアップ界隈でとても認知されていて評判も良いということで元々知っていました。その後、FINOLABで行われたイベントへ参加したり、オフィス見学を通じて、ここならばと確信して入居しました。
当時、在籍していた社員数より大きい個室を借りましたが、現在はメンバーも増え手狭になったこともあり、シェアスペースなども活用しています。

―FINOLABへの入居を決めた際、どのような要因が大きかったですか?

「信用」です。
FINOLABは運営基盤が強固で、かつ入居にあたって審査制度もあります。また規制当局である金融庁が関与するイベントも定期的に開催されています。FINOLABに入居していること自体が最低限の信用保証とみなされます。高い信頼性が求められる金融業界を業務領域とする私たちにとっては、それ自体が非常に大きなアドバンテージになります。
また、フィンテック業界の主要メンバーとのネットワーキング機会が持てることも貴重ですね。

―フィンテックにおける規制のあり方について、金融庁とのコミュニケーションはやはり重要ですか?

極めて重要ですね。FINOLAB内の関連イベントなどで金融庁とコミュニケーションが取れることのメリットは、非常に大きいです。逆に、こういった規制当局とのコミュニケーションパスがないということ自体、この業界ではリスクが大きすぎると思います。

「FINOPITCH2023」優勝! スタートアップにとって重要な発信の場

―他社とのネットワーキングもFINOLABの特徴ですね。

実際に、業務時間中、ふらっと居室を出てイベントスペースの前を通ると、頻繁にイベントが開催されています。軽く立ち話しができたり、ビジネスに通じる、「おお!」と思えるような出会いがあったりします。普段の業務の延長でネットワーキングができるのは大きいですね。また、FINOLABだけではなく、この大手町ビルヂング6階にあるInspired.Labとの共催イベントが開催されることもあります。Inspired.Labには私たちのお客様になりうる大手企業も多数在籍されていますので、その機会にコミュニケーションを行い、ビジネスマッチングができるのも魅力です。

―FINOLABが開催するイベントのひとつに、ピッチイベント「FINOPITCH」があります。GFITは実際に参加され、「FINOPITCH 2023」では優勝されていますね。「FINOPITCH2023」で優勝後、何か変化はありましたか?

もちろんです。「認知」と「信頼」が大きく変わったと実感しています。スタートアップは埋没したままだと何も起きません。自分たちから発信できる機会があるのは本当に貴重ですし、FINOPITCHのようなベンチャーキャピタルや金融機関が集まる場で登壇できるのはとてもありがたく、貴重な機会でした。

―FINOLABの施設やサービスで、役立っているものがあれば教えてください。

施設全体のデザインやファシリティの利用のしやすさが大きなメリットですね。特にコンセントレーションルームの存在や、イベントスペースでのセミナー支援などは有益です。
当社のサービスローンチイベントの際は、FINOLABのメディアチームに配信などサポートしていただきとても助けられました。

―今後の展望を教えてください。

まず社内体制としては、組織力強化と幹部クラスの人材採用に注力し、組織運営の体制を整えます。特にマーケティングやカスタマーサービスの中枢を担える人材を求めています。
ビジネス面では変わらず大手企業へのサービス提供に注力しつつ、中小企業および事業者にもリーチを広げていきます。特に小規模事業者は為替の変動に大きく翻弄される傾向があります。私たちのソリューションでご支援できることは大きいと感じています。為替変動リスクの適切なコントロールをクライアントに提供することで、グローバル市場に挑戦するあらゆる日本企業を支援してまいります。

企業情報

GFIT

Representative Director, co-CEO & CSMO
Shinichi Sakane

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